購入から1年程度のバッテリーでは、経年劣化、サルフェーションの付着、ショート事故が主な要因となる電極障害による電圧降下は、新品の状態よりもさらに大きくなります。
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- バッテリーの電圧降下現象と負荷放電容量の関係
蓄電池の性質として、鉛バッテリー、リチウム系バッテリーにかかわらず、バッテリー容量(Ah)に対し、接続された負荷放電容量(A:アンペア)の大きさによって、実際の蓄電池の電圧値と異なる数値を確認できる「電圧降下現象」が起こります。
たとえば、新品状態の12V、100Ah(1,200Wh容量)の鉛ディープサイクル型バッテリーでは、DC-ACインバーターを介して1,000Wもの大電流を放電させると、概ね「1.5V以上」 の電圧降下が見られます。(放電を中止すると、本来の電圧に戻ります)
当ページでは、ソーラー蓄電システムで使用する接続機器、周辺機器に対する「電圧降下」による弊害、また具体的数値(電圧値)による電圧降下度について解説してまいります。
電圧降下現象による困った問題(『弊害』)について
DC-ACインバーターには、通常「過入力保護遮断回路」と「低電圧保護遮断回路」がそれぞれ内蔵されており、12V入力製品であれば、概ね「10.0V〜11.0V」の間で設定されています。
すなわち、元気で新しい鉛バッテリーであっても、本来の電圧が「12V」(放電深度50%付近)であったとしても、大きな負荷を与えると電圧降下現象により、この保護回路が働きインバーターは出力を遮断してしまいます。そして、一旦遮断してしまうと「復帰電圧設定閾値」(概ね12.5V付近)まで充電されなければインバーターは動作しません。(一度、バッテリーから接続を開放すると再起動します)
以下、新品状態の鉛バッテリーと、経年劣化により極端な電圧降下現象をあらわす電圧値をご確認ください。
※12V定格、115Ah、放電容量5A(60W)と20A(240W)の時と比較してみます。
バッテリー電圧 | 5A時 | 20A時 |
---|---|---|
13.5V(満充電) | 13.3V | 13.0V ※0.2V〜0.5V程度の電圧降下 |
13.0V(放電深度25%) | 12.8V | 12.5V ※0.2V〜0.5V程度の電圧降下 |
12.5V(放電深度40%) | 12.2V | 11.9V ※0.3V〜0.6V程度の電圧降下 |
11.5V(放電深度60%) | 11.0V | 10.5V ※0.5V〜1.0V程度の電圧降下 |
さて、ここまで見てきたとき、バッテリー電圧が「11.5V」(放電深度60%)であった場合、たった50W程度の放電容量にもかかわらず「0.5V」もの電圧降下現象が起こり、前述した低電圧保護遮断電圧値(10.0V〜11.0V)に引っかかってきます。放電容量が240Wであった場合には、当店で販売しているインバーターの保護遮断電圧(10.5V)となり、元気な新品のバッテリーであっても放電深度60%程度でインバーターが出力しないという問題が起こります。
では、極端に劣化したバッテリーでは、どれくらいの電圧降下現象が見られるのでしょうか?
※12V定格、115Ah、放電容量5A(60W)と20A(240W)の時で比較してみます。劣化したバッテリーとは、ここではサイクル回数を「300回」を超えて、満充電時の電圧が「12.5V」である前提とします。
バッテリー電圧 | 5A時 | 20A時 |
---|---|---|
12.5V(満充電) | 12.0V | 11.0V ※0.5V〜1.5V程度の電圧降下 |
11.3V(放電深度50%) | 10.5V | 9.6V ※0.8V〜1.7V程度の電圧降下 |
ここで注意しておきたいのは、劣化したバッテリーはすでに新品時の容量(20時間率容量で115Ah)すら保持できておらず、上記の「11.3V(放電深度50%)」とは、新品状態のバッテリーに比較して半分以下の容量しか持っていないということでもあります。
したがって、電圧降下も大変大きくなり、あっという間にインバーターの低電圧保護遮断回路が動作してしまうということなのです。
ここまで解説してきて、バッテリーの電圧降下現象とは、いわば「バッテリーの性質」であり、ある意味においては「20時間率容量」を基準として規格されている鉛ディープサイクルバッテリーの容量とは、放電容量が大きくなればなるほど実際に放電できる容量(Ah)は少なくなるということなのです。
電圧降下現象を少しでも小さくするために
前項で、バッテリーの「20時間率容量」について記載しましたので、まずはこの点についてあらかじめ説明しておきたいと思います。
すなわち、12V×115Ah=1,380Wh の理論容量(20時間率容量)を持っているということは、1,380Wh÷20時間=69W の消費電力を持っている直流機器をバッテリーに接続して動作させた場合、完全に放電するまで「20時間かかる」という意味となります。
したがって、これまで解説してきたように放電容量が大きくなればなるほど、電圧降下現象の発生とともに、実際に使えるバッテリー容量も「少なくなる」ということなのです。
とえば、上記115Ah(1,380Wh)の20時間率放電容量となる69Wの3倍(約200W)の連続放電を行った場合には、大体ですが70%以下程度の容量維持率でしかありません。逆に、69Wの半分となる35W程度の放電の場合では、期待できるほどの容量増加は見られません。
さて、最後になりましたが、さまざまな「弊害」を引き起こす電圧降下現象を 少なくするためには、バッテリー容量を増やす方法しかありません。
但し、このとき問題になるのは、バッテリー容量を増やすために、すでに1年以上使用した製品や、たとえ1ヶ月未満しか使用していないバッテリーであっても、大容量充放電を行った(酷使してわずかでも電極障害を起こしたもの)製品と新品バッテリーを直並列にして増設することはできません。絶対にできないという意味合いではありませんが、並列接続の場合「概ね2ヶ月以下」、直列接続でも「3ヶ月以内」(ともに酷使していないもの)と、当店では助言しております。
もし仮に、長期間使用したバッテリーと新品バッテリーを直並列接続にした場合、古い方のバッテリーの劣化程度まで新品のバッテリーの品質を落とす結果となります。
いかがでしょうか?
ソーラー蓄電システムでは、放電容量に対する電圧降下現象だけでなく、劣化の進んだバッテリーでは更なる大きな電圧降下現象を引き起こしますので、バッテリーの増設のタイミングはもちろんのこと、DC-ACインバーター容量との適正な組合せをよく考えて設計(再構成)しなければならないのです。
大容量の充放電を行い、あっという間に劣化させてしまったバッテリーであっても、夜間照明などの小容量の放電には耐える体力(容量維持率)を残していることもありますので、その点については、「正確なバッテリー状態の見方と電圧計測の難しさ」ページもぜひ参考にしてください。
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